外国為替相場の見通し

ユーロ危機「危機の本質は通貨高」

ユーロ危機は、表面的には財政問題ではあるが、その本質は通貨高にある。したがって、その根本的な解決には、ユー口の大幅な下落と圏内の物価上昇率格差の解消が不可欠であるが、その道のりは極めて険しい。そのようななか、ユー口危機は、国際金融不安を招来しつつあり、グローバル・デフレのリスクが高まってきた。

 

まず、ギリシャがユーロを導入した2001年1月以降、ユーロは、主要貿易パートナー20力国通貨に対して、最高で26.6%上昇した(2009年10月)。また、2011年8月現在もなお14.9%上昇している。加えて、ユーロ圏内には、大幅な物価上昇率格差が存在する。 2001年1月から2011年8月までに、PIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシヤ、スペイン)の消費者物価は30.7%上昇したが、ドイツとフランスの上昇率は21.4%に過ぎず、両者の格差は9.3%に達している。したがって、物価上昇は実質的な通貨上昇を意味するので、この問のPTIGSにおける実質ユーロ上昇率は20.5%であるが、ドイツにおけるそれは11.9%となっている。

財政赤字とインフレの悪循環

こんなにユーロが上昇してしまうと、PIGS諸国において製造業は立ち行かなくなり、ECB(欧州中央銀行)の存在によって金融政策の自由度を奪われているなか、財政支出に依存した経済運営を強いられ、財政赤字の拡大を余儀なくされる。また、ECBの金融政策はユーロ圏全域の物価状況を勘案して実施されるため、PIIGS諸国においては金利が割安となり、不動産バブルを誘発する一方、金利安、インフレ、通貨高の悪循環が生じる。このように今回のユーロ危機は、ユーロ圏の物価上昇率格差から生じた必然的な産物ということができる。

 

さらに、ユーロ・システムの存在によって、ギリシャやポルトガルが危機に陥っても、ユーロの暴落が回避されているこどが、通貨下落による製造業の競争力回復を図ることができないという点において、逆に経済危機を長引かせる原因となっている。 1994年のメキシコや1997年の韓国の通貨危機において、両国の通貨は、危機発生から3ヵ月間でドルに対して4割以上下落しているが、ユーロ危機における通貨下落は最高でも1割強に過ぎない。

 

このように、ユーロ危機の本質を通貨高ととらえれば、その克服は極めて困難であることがわかる。まず、ギリシャのユーロ離脱に関しては、ギリシャが、通貨暴落と待ったなしの財政改革を強いられる「いばらの道」を敢えて選択する理由はない。同時にギリシャのユーロ離脱は、金融市場にイタリアやスペインのユーロ離脱を想起し、ユーロの不安定化とシステム崩壊を招く危険性をはらんでいる。

 

それでは、ギリシャの参加を放置したままで、同国の競争力が回復する(例えば、ユーロが3割程度下落すれば、ギリシャにとってユーロに参加した2001年1月の水準となる)まで、大幅にユーロを下落させればよいかといえば、ドイツや
フランスがインフレ圧力にさらさせるうえ、ユーロ圏の貿易相手国にはとても受け入れられない。もっといえば、ユーロ危機の再発防止には、圏内の物価上昇率の収れんが必須であるが、そのための妙案は全く浮かばない。

 

ユーロ危機の根本的解決の道は非常に険しい。その一方で、ユーロ危機は、問題債権を多く保有する欧州の銀行の資本不足問題に波及してきた。 IMF(国際通貨基金)も、欧州銀行が抱える潜在的な損失額は2000億ユーロと試算している。すなわち、ユーロ危機は、国際金融不安に進展してきたといえ、欧州銀行の貸し渋りや国際的な銀行間での資金貸借の機能不全を通じて、世界的に資金の流れが滞り、グローバル・デフレの懸念が高まっている。これは、1990年代に日本で起きた金融不安からデフレへの流れが、世界規模で起こりつつあるといえば理解しやすいであろう。いわば、世界規模でのジャパナイゼーション日本化)の始まりである。

 

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米株市場は小動きだったほか、米雇用統計控えていることもあり、膠着感の強い相場展開になろう。ただし、NYダウは利益確定が先行した割には、前日の490ドル高に対して25ドル安と、底堅い展開である。為替相場においてドル円はあまり動かなかった。雇用統計では失業率が9%で横ばい、非農業部門雇用者数は12万5千人増が予想されている。先日のADP雇用統計の上振れにより期待値は高く、ネガティブサプライズを警戒して積極的なポジションは取りづらいだろうが、売られ過ぎの銘柄に対する自律反発の流れは継続するとみておきたい。また、中国の緩和政策への転換により、機械や鉄鋼、商社といった中国関連への見直しも続くことが期待される。